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出雲には日本全国的に有名な、
縁結びの神様を祭っている出雲大社がある。時々ここで「ご縁(ごえん)がありますように」と祈りながら「五円(ごえん)」玉を入れたのが功を奏したのだろうか。
夫と私は、それぞれ出雲市国際交流課の中国交流員、韓国交流員として出会った。それ故、私にとってJETプログラムは、人生の良きパートナーと巡り合わせてくれた、とても有り難い存在だ。
1999年4月、彼は1年目の、私は3年目の年期の入った国際交流員として初めて出会い、小学校や講演などをいつも一緒に回った。それから帰国直前になって、互いの気持ちを確認した私たちは、一旦それぞれ帰国した後、私が彼のいる中国に渡った方がいいという結論を出した。そして私は帰国してまもなく、中国行きに踏み切ったのだ。その間、親の反対とちょっとした紆余曲折はあったが、私たち二人の赤い糸を誰一人も解すことは出来なかった。韓国人と中国人の結婚は、中国朝鮮族の偽造結婚を防ぐためという名目で、実に、想像を絶するほど、その手続きがややこしい。私たちの全ての結婚手続きが終わるまで、なんと8ヶ月もかかったほどだ。
それから去年の10月1日、中国の国慶節に、いよいよ結婚式を挙げることが出来た。出雲市から韓国語と中国語の受講生14人もお祝いに駆けつけてくれた。出雲が結んでくれた彼と私の縁!まだ計画は立てていないが、いつか子どもが生まれたら、3人家族で訪れ、「パパとママはここで出会って、愛を育んだよ」という話を聞かせてやりたいと思う。
中国に来る前、私は、自分を世界どこに行ってもうまくやって行ける「国際人」だと自負していた。しかし、現実は甘くなかった。まず、「二ハオ」しか知らなかった中国語を覚えることが、私に与えられた最大の課題だった。油濃い中国料理が口に合わなくて、一時期は油と山椒の匂いがするだけで吐き気を覚えたりした。歩道者も、運転者も信号を守らない中国で、道を渡る時は背に冷や汗を掻く位緊張したりする。また乾燥している気候のせいもあるだろうが、場所を問わず、道端にタンや唾を吐く、けっこうマナーの悪い中国人が少なくないため、こういう人群れの中で「もしかして唾でも飛んで来るのでは」と思い、周りに気を付けながら歩いている。バスの中で、たばこを吸うことなんか、中国じゃマナーの悪い範囲にも入らない。バスの中でタンを吐いている人の姿など、ここじゃありふれた光景だ。
しかし、何よりも慣れないことは、中国人との付き合いだ。あまりにもべたべたしているという表現なら当てはまるだろうか。初対面の人でもまるで親友のように、根掘り葉掘り聞いてきたり、私について一気に分かろうとする。友達の間では「私のモノ、あなたのモノ」という概念が存在しない。もちろん、割り勘というのはめったにない。夫が出張に行ったら、夫の友達のガールフレンドが、夫と私は頼んでもいないのに、自らやって来て、「一人では寂しいだろうから」と、夫が出張に行っている間ずっと、我が家に泊まる。「いや、一人で大丈夫だから」と、追い出すこともできないし、心配してくれるその気持ちはとても有り難いが、これこそ有り難迷惑だ。こういう事への対策として、それ以来、夫が出張に行っても友達に言わないことにしている。日本にいた頃、よく日本人の人間関係がクールだと思ったりした。中国は正にその反対だとつくづく感じる。
もう一つ、私を悩ませている事がある。これは、今まで少なくない混乱期を経験した中国人の、生き残るために一つの方法だったのではないかと、勝手に思ったりするが、実に私を呆れさせている。それは何かと言うと、目の前の小さな利益に捕らわれて、平気で嘘を付く中国人が少なくない点だ。私の経験した事の中で最も程度の軽い一例を挙げると、喫茶店でオレンジージュースを頼んだ時の事だ。中国は、喫茶店のウエートレスも、基本給与以外に、自分が上げた売り上げによってリベートを取る仕組みになっていることが少なくないのだ。私はコーラを注文しようとしたが、そのウエートレスがオレンジジュースを薦めたので(コーラよりオレンジジュースの方が倍ぐらい高かった)、それならオレンジジュースでもいいと思い、100%のものかと聞いた。その店員は、はっきりした口調で100%だと答えたので、結局、オレンジジュースを頼むことにした。しかし、これはいったいどういう事なのか。運ばれてきたジュースは100%どころか、20%にもならない、ただのオレンジ味の粉に水と砂糖を加えたものだったのだ。その店員にどうして嘘をついたのかと、聞いた。何の答えもせず、ただ困った表情で、私の顔を見ていた。以前なら、店の責任者を呼んで事情を話したかも知れない。しかし、すでに何回も似たような事を経験した私は、もうこういう事に免疫がついてしまったこともあって、それ以上追求しなかった。また騙された自分が馬鹿に思えただけだった。その店員はまだましな方だ。大体こういう場合、自分は「そんなことを(100%のオレンジジュースだと答えたこと)言った覚えがない」と、更に真っ赤な嘘をつく人がほとんどだからだ。もちろん、13億人もなる人口だから、いい人も沢山いる。私がたまたま運悪く、こういう人たちに引っ掛かったかも知れないが、こういう経験をする度に、不愉快な気分と共に、わけの分からない悲しさを覚える。こういう風に、まだ「信用社会」という概念が成り立っていない中国での生活に、時々疲れを感じたりする。
一応まとめてみたが、中国の悪口ばかりを書いたようで、少し申し訳ない気がする。夫がこれを読んだら、どれほど悲しむだろう。しかし、紙面が足りないこともあって、中国の素晴らしいところは、今度紹介することにしよう。
中国に来て、あれこれ1年半が過ぎた。この文を切っ掛けに1年半を振り返ってみると、感慨深い。自分との戦いだったと言えば良いだろうか。夫の応援がなければ、耐えられなかっただろう。夫への感謝の気持ちが湧いて来る。1年半の間、私のヒステリー(?)を、何の文句も言わずに撫でさすり、私を導びき、励ましてくれた夫に、感謝状でも送りたい気持ちで一杯だ。そして、韓国人嫁のために、わざわざ辛い料理を作って運んでくれる(実は私はあっさりしたものが好きだ)義父母と、少し煩わしいが、夫が出張にでも出かけたら一足に駆けつけ、進んで私の話し相手になってくれる中国の友達がいる限り、中国は、私にとって、憎めようとも、決して憎めない存在であるだろう。 |
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